
インドネシアでは現在、外国人や外国企業の資本が入った形で、会社を設立し、100%保有できる事業分野が200以上あります。
ただし、すべての事業が自由にできるわけではありません。事業分野によっては、外国人が参入できないものや、一定の条件が設けられているもの、現地企業とのパートナーシップが求められるものもあります。
こうした事業分野ごとの取り扱いを整理した制度が、「ポジティブ投資リスト (ポジティブ・インベストメント・リスト/Positive Investment List)」です。この制度では、外国人や外国企業の資本が入った場合に、どの事業が可能で、どの事業に条件があるのかが分かるようになっています。
本記事では、インドネシアで事業を検討している日本人や日本企業に向けて、特に中小規模のビジネスでも現実的に参入しやすい事業分野を、できるだけ分かりやすく説明します。
目次
ポジティブ投資リストとは
これまでインドネシアの投資政策では、多くの事業分野において、外国人や外国企業が関わることに制限がありました。
しかし、大統領令第10号(2021年)および同第49号(2021年)の施行により、現在では、外国人や外国企業の資本が入った形で、100%出資・所有が認められる事業分野が大幅に拡大しています。この制度は、「ポジティブ投資リスト(ポジティブ・インベストメント・リスト/Positive Investment List)」と呼ばれています。
現在、外国人や外国企業が事業を行うことができる分野には、経営・ビジネスコンサルティング、IT・デジタルマーケティング、観光・宿泊業、一定規模の小売業、外国レストランや飲食店の運営・管理などがあります。また、エネルギー分野や建設分野の一部についても、外国の資本が入った形で事業を行うことが認められています。
一方で、ポジティブ・インベストメント・リストでは、事業分野がすべて同じ条件で開放されているわけではありません。インドネシア政府から特別な支援を受けられる分野、条件付きで認められる分野、現地企業との協力が必要な分野、外国人が事業を行えない分野などに分けて整理されています。理解しやすいよう、事業分野は次のように分類されています。
| 区分 | 分野別 |
|---|---|
| 優先分野(政府からの支援対象) | 246 |
| 協同組合・中小零細企業(UMKM)向け、または提携が必要な分野 | 106 |
| 条件または出資制限が設けられている分野 | 37 |
| 閉鎖分野 | 9 |
1 優先分野(セクター・プライオリティ)
優先分野とは、日本人を含む外国人または日本を含む外国企業の資本が入った形で、100%出資・所有が認められている事業分野を指します。そのうえで、一定の条件を満たす場合には、インドネシア政府から追加的な支援(優遇措置)を受けられることがあります。
優先分野は、インドネシア投資省/投資調整庁(BKPM)によって指定されており、国の経済成長にとって重要と考えられる事業活動を促進する目的で設けられています。

インドネシア政府が優先分野に対して提供する支援には、税制上の優遇措置および税制以外の支援が含まれます。主な内容は以下のとおりです。
| 税制上のインセンティブ | 制度面での支援 |
|---|---|
※赤字が出た場合、その赤字を将来の利益と相殺できる制度
|
|
優先分野に該当するだけですべての企業が自動的に支援を受けられるわけではありません。事業分野に加えて、以下の条件のいずれか一つ以上を満たす必要があります。
- 従業員200人以上を雇用する労働集約型事業
- 投資額1,000億ルピア(※同日時点で約9億4,000万円相当)以上の資本集約型事業
- 国家戦略プロジェクトへの参加
- 輸出を主とする事業
- 先導産業(再生可能エネルギー、石油精製、金属加工など、国が重点的に育成している産業)
- 高度な技術を使用していること
- 研究開発活動を行っていること
これらの条件から分かるとおり、優先分野における支援制度は、主に大規模な事業が入ることを想定した制度となっています。
そのため、中小規模の事業者の場合は、支援制度が使えるかどうかよりも、そもそも外国の資本が入った形で事業ができる分野かどうかが重要になることが多く、優先分野の支援制度は必ずしも検討の中心にはならないケースもあります。例えば、レストランや小売店といった比較的小規模な事業の場合、事業分野自体は外国の資本が入った形で認められていても、このような支援の対象にはならないことが一般的です。
2 協業・提携が必要な分野
この区分に該当する事業分野は、原則として外国人や外国企業の参入が認められているものの、単独で事業を行うことはできません。
外国人や外国企業は、現地の協同組合または中小零細企業(UMKM)との提携した形で事業を行う必要があります。こうした提携の形態は、事業内容に応じて、業務提携、利益分配、下請契約、アウトソーシング、販売・流通契約など、さまざまな方法が認められています。
この区分に含まれる事業分野には、一般的に次のような特徴があります。
- 高度な技術を使用しない事業
- 労働集約型で、地域性や文化的背景のある事業
- 投資規模が比較的小さい事業(資本金10億ルピア以下/※同日時点約950万円相当)
こうした特徴から、これらの分野は外国の資本が入った形で単独展開するよりも、現地の事業者と協力しながら進めることが適している分野と位置付けられています。そのため、外国人や外国企業には、UMKMの役割を置き換えるのではなく、補完する立場での関与が期待されています。
この区分に該当する事業分野は全部で106分野あり、そのうち、60分野は協同組合・現地UMKM専用の分野として外国人の参入が認められていません。残りの46分野については、外国人や外国企業が事業を行う場合、協同組合またはUMKMとの提携が義務付けられています。以下は、この区分に含まれる事業分野の一例です。

例えば、インドネシアで日本式の耐震構造を用いた建築工事を行う中小規模の会社を設立する場合、外国の資本が入った形で事業を行うことは可能です。実務上は、現地のUMKMと協力し、施工業務の一部を委託する下請契約やアウトソーシング契約、または設計・施工管理と現場作業の役割分担を定めた業務提携契約を締結したうえで事業を進めることが求められるケースが多くあります。
3 外国人による出資に制限のある分野
37分野については、外国資本の出資比率や参入条件に制限があります。主な対象分野は、メディア、放送、航空、海運、林業、特定商品(コーヒー等)です。
制限の例は以下のとおりです。
| 分野 | 出資制限 | 主な要件 |
|---|---|---|
| 新聞・雑誌発行 | 外国資本49%まで | 事業拡大は資本市場経由 |
| 航空運送事業 | 外国資本49%まで | 国内資本が過半数を維持 |
| 宅配・クーリエ事業 | 外国資本49%まで | - |
| 州間先駆航路(海運) | 外国資本49%まで | - |
4 閉鎖分野
以下の9分野は、外国人・インドネシア人を問わず、一切の投資が認められていません。
- 第1類麻薬およびその栽培
- ギャンブルおよびカジノ
- 保護対象魚種の捕獲
- 天然サンゴの装飾品・建材利用
- 化学兵器製造
- 蒸留酒製造
- ワイン系アルコール飲料製造
- モルト系アルコール飲料製造
- オゾン層破壊物質および有害化学物質
外国人が出資・参入する際の実務上のポイント
会社設立前の場合
ポジティブ投資リストの施行により、選択した事業分野が外国人による出資に開放されている場合、会社設立は以下の流れで進めることができます。
- 該当する KBLI(インドネシア事業分類コード) を選定し、当該事業分野が 外国人による100%出資が可能か、一部制限があるか、または提携が必要か を確認する
- 会社設立の初期段階で 株主構成を確定 する
- 外国人による100%出資が認められている場合、現地株主を含めずにPT PMA(外国資本会社)を設立 する
- 株主構成、取締役・監査役の体制、事業内容を反映した 定款を公証人(Notaris)のもとで作成 する
- 法務人権省 から法人としての認可を取得する
- OSS(Online Single Submission)システム を通じて、NIB(事業者番号) の発行および事業リスクに応じた関連許可を取得する
すでに会社がある場合
すでに設立済みの会社が、後に外国人による出資が認められた事業分野で事業を行っている場合、以下の手続きを通じて会社の再編を行うことが可能です。
- 株主総会 による株式取得の決議
- 経営権に変更が生じる場合の 新聞公告
- 公証人(Notaris)のもとでの株式売買契約書の作成
- 既存の 貸付契約や株式担保(質権)設定がある場合の解消
- 法務人権省 に変更の承認取得
- OSS(Online Single Submission)システム 上での事業許可情報の更新
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上原総合法律事務所では、インドネシアへの事業展開をご検討されている企業様を対象に、各種ご相談を承っております。法規制の整理や事業スキームの検討をはじめ、実務面も含めて、企業様それぞれの状況に応じたご相談が可能です。
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