外国人の資本で行うインドネシア会社設立:日本人が知っておきたいポイント

[投稿日]2026.01.05
[更新日]
コラム

インドネシアでは、外国人や外国企業の資本が入った形で会社を設立し、事業を行うことが可能です。

こうした形態の会社の一つが、PT PMA(Perseroan Terbatas Penanaman Modal Asing) と呼ばれる外国投資会社です。

本記事では、インドネシアで会社設立を検討している日本人の方に向けて、外国人の資本が関与する場合の基本的な考え方を踏まえながら、PT PMAの概要と基本的なルールを、できるだけ分かりやすく解説します。

PT PMAの設立には一定の手続きが必要となりますが、インドネシアで事業を始めるうえで欠かせない重要なステップです。

1  PT PMAとは何か

PT PMA とは、外国人個人、外国法人、または外国の資本を用いて、インドネシア国内に設立される 有限責任会社(株式会社) です。

PT PMAを設立することで、外国人投資家は 現地のインドネシア企業(ローカル子会社)を介さずに、インドネシア国内で直接事業を行い、利益を得ることができます

PT PMAは、2007年法律第25号(投資法)第1条の3 に基づいて定められています。また、以下の法令・規則にも関連規定が設けられています。

  • 2007年法律第25号(投資法)
  • 2007年法律第40号(会社法)
  • 雇用創出法(2022年政令代行法第2号、2023年法律第6号として制定)
  • リスクベース事業許可に関する政令(2021年政令第5号、2025年政令第28号により改正)
  • 投資分野に関する大統領令(2021年第10号、同年第49号により改正)
  • OSS(オンライン・シングル・サブミッション)制度に関する投資省/BKPM規則(2025年第5号)
  • 会社の設立・変更・解散に関する法務人権省規則(2021年第21号)
  • リスクベース事業許可および投資優遇に関するBKPM規則(2021年第4号)

2 外国人投資家の持株

インドネシアでは 「ポジティブ投資リスト」 という制度が導入されており、200以上の事業分野において、外国人または外国企業による出資が認められています

ただし、すべての業種が完全に開放されているわけではありません

国家安全保障、公共の安全、公共性に関わる分野については、外国投資が制限または禁止されている場合があります。

また、一部の事業分野では、外国人の出資比率に上限が設けられていたり、インドネシアの現地企業との協業が求められるケースもあります

事業分野に関する規制は、主に以下の3つに分類されます。

完全に禁止されている分野
麻薬関連産業、賭博・カジノ事業、サンゴ礁の採取・採掘、化学兵器製造産業、酒類製造業
一部制限がある分野鉱業・エネルギー、農業、観光・宿泊業、小規模小売業およびサービス業
条件付きで外国資本が認められる分野医療・医薬品分野、教育、電気通信・放送事業

3 PT PMAの費用

PT PMAは法人格を有する会社形態であることが義務付けられており、大企業(Usaha Besar)に分類されます。

大企業とは、土地および建物の価値を除き、投資額が100億ルピア(※2025/12/18時点の為替レートで約9,400万円相当)を超える事業を指します。

この投資額には、払込資本金、機械・設備の購入費、初期運転資金、車両および事業用備品等、事業活動を遂行するために計画される資金が含まれます。

また、投資額とは別に、PT PMAは最低25億ルピア(※同日時点で約2,400万円相当)の払込資本金を有することが義務付けられています

当該資本金は、会社設立時に充当する必要があり、PT PMA名義の銀行口座への送金、または資産の形で実際に払い込まれる必要があります。払込資本金の金額は、公証人により記録され、会社設立証書(定款)に記載されるとともに、実務上は許認可手続きや報告の過程で確認されるのが一般的です。

4 PT PMAとローカル企業の違い

インドネシアでは、会社は外国資本が入っているかどうかによって、ローカル企業(国内資本のみ)と外国投資企業(PT PMA)に区分されます。この区分により、適用される規制や義務が異なります。

主な違いは以下のとおりです。

ローカル企業PT PMA
株主構成インドネシア国民またはインドネシア法人が100%出資事業分野および規制に応じて、外国人・外国法人が一部または全部を出資
規制・許認可国内一般規制が適用外国投資規制が適用
最低投資額中小企業(UMKM)については原則として最低額の定めなし100億ルピア超(土地・建物を除く)
払込資本金会社法および設立者間の合意に基づく最低25億ルピア
事業分野法令で制限されていない分野ポジティブ投資リストに基づく
外国人労働者雇用に制限あり比較的柔軟(ただし労働関連規制は適用)
税務国内税制が適用条件により税制優遇措置の対象となる場合あり

5 インドネシア市場への代替的な進出方法

PT PMAを新設する以外にも、事業目的や状況に応じて、別の方法でインドネシア市場に参入することも検討されます。

代表的な方法として、M&A(合併・買収)および名義貸し(ノミニー)があります。

M&A(合併・買収)

M&Aにより、外国企業は既存のインドネシア企業に出資または買収することで、新たに会社を設立することなく事業に参入することが可能です。

既に法人が存在し、一定の許認可を保有している場合もあるため、手続き面で比較的スムーズに進むケースがありますが、規制上の調整が必要となる場合もあります。

なお、外国資本が入った時点で、当該会社はPT PMAとして扱われます。これは、新設か買収かを問いません。

もっとも、事業分野ごとの外国資本規制は引き続き適用されます。一般的な目安としては、以下のとおりです。

  • 外国資本100%可:製造業、ITサービス、コンサルティング等
  • 持分制限あり(最大49%):国際海運、郵便事業等
  • 外国資本不可:伝統的船舶、伝統医薬・化粧品等

名義貸し(ノミニー)

名義貸し(ノミニー)とは、外国人が実質的に出資・経営を行いながら、形式上はインドネシア国民の名義で株主や役員として登録するスキームです。

このようなノミニー構造は、インドネシアでは違法とされており、契約は法律上無効となります。会社に関する法的権利は、登記上の名義人のみに認められ、たとえ資金を拠出していても、外国人側には利益や経営に対する法的権利は認められません

6 PT PMAの設立

PT PMAの設立には、公証人(Notaris) のサポートが必要です。公証人とは、インドネシア国から正式に任命され、法的に有効な書類を作成・認証する専門職です。

公証人は、会社設立証書(定款)を作成し、必要書類を準備したうえで、法人管理システム (SABH)に会社を登録します。登録完了後、会社情報は法務人権省が運営する一般法務行政 (AHU) 公式サイト で一般公開されます

PT PMA設立のために準備すべき書類一覧は以下のとおりです。

会社関連書類

  1. 各株主からの委任状
  2. オフィス賃貸契約書
  3. ビル管理会社発行の住所証明書
  4. 当年度の固定資産税(PBB)納税証明
  5. 建物使用許可(PBG)または建物所有証明書
  6. 賃貸証明書(該当する場合)
  7. オフィス写真(受付、社名看板、執務スペースなど)
  8. 会社の住所証明書
  9. レターヘッドおよび社印デザイン(ある場合)

株主関連書類

  1. 定款およびその変更履歴(英語またはインドネシア語)
  2. 事業登録証明書
  3. 取締役構成

取締役・監査役の個人書類

外国籍の方

  1. パスポートのカラー写し(有効期間が18か月以上あり、空白ページが4ページ以上あるもの)
  2. インドネシアのビザスタンプ
  3. 取締役の居住証明書(ホテルまたはアパート)
  4. 証明写真(3×4cm、赤背景)

インドネシア国籍の方

  1. 身分証明書(KTP)および納税者番号(NPWP)
  2. 親族関係書類 (KK)
  3. 証明写真(3×4cm、赤背景)

7 PT PMAの事業許可

PT PMAは、設立後に Perizinan Berusaha(事業活動に必要な許可) を取得して初めて、事業を開始することができます。この手続きは、OSS(オンライン・シングル・サブミッション) システムを通じて行われます。

事業許可は主に以下の2種類に分かれます。

  1. リスクベース事業許可(PB):事業のリスクレベルに応じて決定
  2. 事業活動を支援する許可(PB UMKU):事業を適切に運営するための追加許可

一般的に必要な書類は以下のとおりです。

  • 用途地域適合証明(KKPR)
  • 環境承認(PL)
  • 建物使用許可(PBG)および使用適合証明(SLF)

一方、事業内容、リスクレベル、インドネシア標準産業分類(KBLI)コード によっては、追加書類が求められる場合があります。

リスクレベルの分類は以下のとおりです。

  • 低リスク:事業者番号(NIB)が必要
  • 中リスク:NIBおよび標準証明書が必要
  • 高リスク:NIBおよび許可(ライセンス)が必要

インドネシアで会社設立を検討する日本人にとって、外国人の資本が関与する形での会社設立は一般的な選択肢の一つであり、その代表例がPT PMAです。

業種や事業規模によって必要な手続きは異なるため、事前に全体像を把握し、必要に応じて専門家と連携しながら進めることで、インドネシアビジネスをスムーズに開始できます。