特定技能「宿泊」の外国人にはどのような仕事を任せられるのか?

[投稿日]2024.05.14
[更新日]
コラム

ホテル・旅館で特定技能外国人を雇用する場合、「宿泊」の特定技能を有する方を雇うことが多いです。
当事務所では、ホテル・旅館の方から、客室清掃をさせて良いのか、などの質問をいただくことがあります。
外国人労働者を雇う場合、日本人を雇う場合と異なり、担当させる業務内容にも気を配る必要があります。
この記事では、業務内容に気を配るべき理由や、特定技能「宿泊」で在留する外国人にさせて良い業務の範囲を説明します。

1 なぜ業務内容に注意しなければならないのか

特定技能外国人は、認められた条件内で仕事をすることを条件にビザが発給されています。
そのため、ビザの条件外で仕事をしてしまうと、違法(不法就労)になります。
そして、労働者が不法就労をしていた場合、不法就労させていた会社にも不法就労助長罪という犯罪が成立し得ます。
不法就労助長罪は、故意ではなく過失でも犯罪になるという特徴があります。
そのため、会社としては、不法就労をさせるという認識がなくても、不法就労をさせたことに過失(落ち度)がなかったと言えない限り、不法就労助長罪等で処罰されてしまう可能性があります。

2 宿泊における業務内容とは

1号特定技能外国人の主たる業務は「宿泊施設におけるフロント、企画・広報、接客、レストランサービス等の宿泊サービスの提供に従事する業務」とされています(※)。

そして、当該業務に従事する日本人が通常従事することとなる関連業務(館内販売、館内備品の点検・交換等)に付随的に従事することも認められています。

なお、主たる業務においては、フロント、企画・広報、接客及びレストランサービス等の宿泊サービスの提供に係る業務に幅広く従事する必要があるとされていることに注意が必要です(※※)。

すなわち、許可された在留期間全体の中の全ての期間においてフロント係に配置されるなどとなると、許容されなくなってしまう可能性があります。
ただし、職場の状況に応じて、例えば、許可された在留期間全体の中の一部の期間においてフロント係に配置されるなど、特定の業務のみに従事することも差し支えないとされています。

※「宿泊分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」
ここには2号特定技能外国人の主たる業務として、「複数の従業員を指導しながら、宿泊施設におけるフロント、企画・広報、接客、レストランサービス等の宿泊サービスの提供に従事する業務」とも規定されています。

※※特定の分野に係る特定技能外国人受入れに関する運用要領 -宿泊分野の基準について-(法務省・国土交通省)4頁

3 客室清掃等は一切してはいけないのか

では、ホテル・旅館において「宿泊」の特定技能外国人は、客室清掃を一切してはいけないのでしょうか?
2で述べたように、「宿泊」の主たる業務は、フロント、企画・広報、接客、レストランサービス等の宿泊サービスの提供に従事する業務とされており、ここには客室清掃は書かれていません。しかし、客室清掃は主たる業務に従事する日本人が通常従事するものであると考えられ、付随的業務であると考えられます。

そのため、ホテル・旅館において「宿泊」の特定技能外国人は、客室清掃をすることは可能です。

しかし、主たる業務においても、「幅広く従事」する必要があるとされており、客室清掃だけをすることは認められないと考えられます。

どの程度「幅広く従事」する必要があるのかについては会社ごとの状況により変わり得ますし、思わぬ揚げ足を取られないように「幅広く従事」していることを説明できる資料や状況を作っておくことも大切です。

4 お気軽にお問い合わせください

上原総合法律事務所では、外国人労働者を雇用する会社からのご相談をお受けしています。
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