
弁護士・社会保険労務士 中村拓朗
第二東京弁護士会
この記事の執筆者:弁護士・社会保険労務士 中村拓朗
司法修習修了後、アンダーソン・毛利・友常法律事務所にて主に労働法を専門に取り扱う。 ロンドン大学キングスカレッジ修了、在米ニューヨークの日系大手商社子会社出向など、 海外経験や外国人労働者事案の取扱いも豊富。2023年上原総合法律事務所に入所。
外食業分野における特定技能1号の受入れについて、農林水産省及び出入国在留管理庁より極めて重要な発表が行われました。外食産業の経営者様や人事担当者様におかれましては、今後の外国人採用計画に直結する内容となりますので、必ずご確認ください。
目次
■ 特定技能(外食業分野)が受入れ上限に到達する見込み
農林水産省の発表によりますと、外食業分野における特定技能1号の在留者数は、2026年2月末現在で約4万6千人(速報値)に達しており、本年5月頃には受入れ見込数(受入れ上限:5万人)を超えることが見込まれる状況となりました。
これに伴い、2026年4月13日以降、出入国管理及び難民認定法の規定に基づき、新規の受入れに関する各種申請に対して一時的な停止措置がとられる方針です。
(参考元資料:出入国在留管理庁「特定技能『外食業分野』における受入れ上限の運用について」 http://moj.go.jp/isa/applications/ssw/03_00001.html
農林水産省「特定技能『外食業分野』における受入れ上限の運用について」 https://www.maff.go.jp/j/shokusan/gaisyoku/attach/pdf/gaikokujinzai-110.pdf )
■ 2026年4月13日以降の具体的な取扱いについて
今回の発表による各種申請への影響は以下の通りです。
- 在留資格認定証明書交付申請(海外からの新規呼寄せ) 2026年4月13日以降に受理された申請は、不交付となります。 同日より前に受理された申請については、審査の上、受入れ見込数の範囲内で順次交付されます。ただし、既に国内に在留している方からの在留資格変更許可申請を優先的に処理するため、交付までに相当な遅延が生じることが見込まれています。
- 在留資格変更許可申請(国内からの資格変更) 2026年4月13日以降に受理された申請は、原則として不許可となります。
ただし、同日以降であっても、以下のような例外に該当する場合は、審査の上、受入れ見込数の範囲内で順次許可される可能性があります。
・既に外食業分野で特定技能1号として在留する方からの転職等に伴う申請
・技能実習(医療・福祉施設給食製造作業)を修了し、特定技能1号(外食業分野)に移行する方
・既に外食業分野に係る特定活動(特定技能1号移行準備)の許可を受けており、特定技能1号(外食業分野)に移行する方 - 特定活動(特定技能1号移行準備)への変更申請 原則として不許可となります。ただし、上記2と同様に特定の例外に該当する方からの申請については個別に審査されます。
■ 企業様が今後取るべき対応と注意点
外食業分野での新規受入れが一時的に停止されるため、海外からの新規採用や、留学生などから特定技能(外食業分野)への変更を前提とした採用計画は、抜本的な見直しが迫られます。
すでに内定を出している外国人材がいる場合、4月12日までに申請を受理させるための迅速な対応が必要となります。しかしながら、期間内に申請できたとしても許可が保証されるわけではなく、遅延や不許可のリスクを想定した対応策をあらかじめ準備しておくことが求められます。
■ 受入れ制限に伴う「不法就労・不法就労助長」リスクの高まりについて
- 留学生の資格外活動許可失効後の就労リスク
外食業では、日本の大学や専門学校に通う留学生をアルバイトとして雇用し、卒業後に「特定技能」へ在留資格を変更して、そのまま正社員として採用するパターンが見られます。しかし、今回の受入れ制限により、この「特定技能(外食業分野)」への移行が困難になります。
ここで改めてご注意いただきたいのが、留学生のアルバイトのルールです。留学生は「資格外活動許可」によって一定時間の就労が認められていますが、これはあくまで「教育機関に在籍している間に行うもの」に限られます。
そのため、学校を卒業(または退学)した後は、たとえ在留カードに記載されている在留期間がまだ残っていたとしても、資格外活動許可は失効し、働くことはできなくなります。
「特定技能への変更ができないから、とりあえず今のままアルバイトで仕事をさせよう」と、卒業後も就労を継続させてしまうと、不法就労となりますので十分にご注意ください。 - 在留期間経過(オーバーステイ)による就労リスク
特定技能1号への移行を予定していた技能実習生や、特定活動の在留資格を持つ外国人が、今回の制限により変更申請が不許可となった場合、速やかに適切な在留手続(帰国準備のための変更など)を行わずに在留期間を経過してしまうと、オーバーステイとなります。この状態で就労をさせてしまうと、不法就労活動に該当し、これを行わせた者は不法就労助長罪に問われるリスクがあります。 - 雇用主における「不法就労助長罪」のリスク
雇用主が、従業員の特定技能への変更が不許可となった事実や、留学生の資格外活動許可が失効した事実を見落とし、そのまま就労を継続させた場合、不法就労助長罪(入管法第73条の2第1項)に問われる重大なリスクがあります。
不法就労であることを知らなかった場合でも、在留カード確認や在留期間の適切な管理を行う等、「雇用主側に過失がなかったこと」が認められない限り、処罰の対象になり得るという非常に厳しい規定になっています。
過去には、大手外食チェーンにおいて留学生の退学後などに就労を継続させたことで、事業者が書類送検された事例も実際に存在します。
今後、外食業の特定技能在留資格の受け入れが制限されることにより、現行の在留資格の範囲や期限を超えて就労してしまうリスクが構造的に高まっています。
これは、ホテルや旅館等の宿泊施設において、レストランを併設し、外食業の特定技能資格で外国人に配膳等をさせている事業者様も同様です。
ここで絶対に避ける必要があるのは、「特定技能(外食)で採用できなくなったから、代わりに『技術・人文知識・国際業務(技人国)』の在留資格で採用し、レストランのホール業務をさせよう」という安易な判断です。
技人国の資格を持つ従業員が、フロント業務等の合間に「一時的・付随的」にレストランの配膳等を手伝う程度であれば直ちに違法とはなりませんが、結果として接客や配膳が「主たる業務」になっていると判明した場合、在留期間の更新が不許可となる等の厳しい措置がとられます。このような実態と資格が伴わない働かせ方は「偽装技人国」と呼ばれ、警察や入管の厳格な摘発対象となります。
外国人従業員の在留資格の取扱いや、今後の雇用管理について少しでもご不安な点がございましたら、不測の事態を招く前に、当事務所へお気軽にご相談ください。
