2026年施行の行政書士法改正が特定技能に与える影響と企業の対応策

[投稿日]2026.01.14
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コラム

2026年(令和7年)1月1日、特定技能の受け入れの際に注意が必要な行政書士法の改正が施行されます。

今回の改正により、これまで曖昧だった「誰が報酬を得て申請書類を作成できるのか」という点が明確化され、登録支援機関等の外部業者が行ってきたと言われる書類作成について、違法行為に該当する可能性が指摘されています。

外国人雇用が一般化するなか、企業に求められるコンプライアンスは、これまで以上に厳格なものになります。

本記事では、行政書士法改正の内容、違法となり得る行為、そして受入れ企業が今取るべき対応策について、分かりやすく解説します。

1 行政書士法改正の概要と特定技能への影響

1 行政書士法改正の背景と目的

特定技能外国人を海外から呼び寄せる際、受入れ企業が入管へ在留資格認定証明書交付申請を行い、多数の申請書類を提出する必要があります。

本来、これらの書類は企業が作成すべきものですが、入管法や運用ルールの専門知識が求められるものであるため、実際には、登録支援機関やコンサルタントなどが「手数料」、「コンサルタント料」、「サポートセット」などの名目で、実質的に報酬を得て申請書類の作成代行を実施しているケースが見受けられたことが行政書士法改正の背景の一つと言われています。

そもそも官公署に提出する書類の作成について、弁護士及び行政書士以外の者が、報酬を得て作成を行うことは、行政書士法違反となります

今回の改正は、「誰が報酬を得て申請書類を作成できるのか」という問いに対して、行政書士等に明確に限定し、違反行為に対して罰則を与えることが法律上明確になりました

2 特定技能制度の重要性とその役割

特定技能制度は、人材確保が難しい分野における深刻な労働力不足に対応するために創設された制度です。

技能評価試験や日本語能力試験に合格した即戦力人材を受け入れられるもので、活躍が期待されています。

一方で、近年の外国人政策では在留資格審査の厳格化が進んでおり、申請手続を適切に進めるためには、専門資格者の知識やサポートがより重要になってきています。

第2 登録支援機関の役割

登録支援機関の役割は、特定技能で来日する外国人が日本で円滑に働き、生活できるよう支援することにあります。

主たる業務は、事前ガイダンスや入国直後の手続き、住居確保、生活オリエンテーション、定期面談などの支援計画に基づく各種支援の実施です。

申請書類の作成はそもそも業務には含まれておらず、利用する受入れ企業は、その点を理解し、利用する際には注意が必要です。

第3 行政書士法改正の内容

第19条第1項の業務制限規定が改正され、業務の制限規定の趣旨が明確化されました。

現行は以下のように定められています。
行政書士又は行政書士法人でない者は、業として第一条の二に規定する業務を行うことができない。

改正後は以下のように定められます。
行政書士又は行政書士法人でない者は、他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て、業として第一条の三に規定する業務を行うことができない。

「他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て」という文言が追加され、行政書士等ではない無資格者が「手数料」、「コンサルタント料」、「サポートセット」などの名称のいかんを問わず、報酬を受けて申請書類を作成することが、明確に違法であると位置づけられました

また、業務の制限規定の違反が、両罰規定の対象ともされました。
両罰規定とは、違反した行為者個人だけでなく、その者が所属する法人にも罰則が科されるというものです。
例えば、登録支援機関の職員が担当する企業の申請書類を良かれと思い作成した場合、その職員が所属する法人も処罰対象 となります。

なお、受入れ企業が違法であると知りつつ無資格者へ書類作成を依頼したとしても、行政書士法の両罰規定の対象には含まれませんが、このような行為は入管手続上の信頼性を損ね、別の法的リスクや審査上の不利益 を招く可能性があるため、注意が必要です。

第4 違法となり得る行為とは

無資格者が、報酬を得て官公署に提出する申請書類等を作成する行為は、名称のいかんを問わず違法となります。

報酬が「手数料」「サポート費用」「コンサルティング料」などの名目であっても、実質的に書類作成の対価と評価される場合には違法となります。

また、形式上は無償としていても、他の業務報酬に含まれるなど実質的な対価性が認められれば、同様に違法と判断される可能性があるため注意が必要です。

こうした違反行為が認定された場合、行政指導や刑事上の責任を問われるリスクがあるだけでなく、コンプライアンス違反として企業イメージや社会的信用を大きく損なうおそれもあります。

特に在留資格申請は厳格化が進んでおり、受入れ企業にとっては、事業継続にも影響しかねない重大な問題となるため、必ず適法な資格者に依頼することが重要です。

第5 受入れ企業が取るべき対応策

行政書士法改正の内容を踏まえ、特定技能外国人を受け入れる企業は、申請体制が適法であるかを改めて確認する必要があります

今回の改正は、新たに違法行為を創設するものではなく、従来から違法とされてきた「無資格者による有償の申請書類作成」について、業務制限規定の趣旨を明確化したものです。

そのため、2026年(令和7年)1月1日以前であっても、無資格者が報酬を得て申請書類を作成する行為は違法である点には注意が必要です。

すでに登録支援機関やコンサルティング会社などの外部機関に業務を委託している受入れ企業は、無資格者が申請書類の作成に関与していないか、また、書類作成業務がサポート費用等の契約パッケージに含まれていないかを確認することが重要です。

申請書類の作成方法について、受入れ企業が選択できるのは、

① 企業自らが作成する方法

② 行政書士等の資格者に作成を依頼する方法

のいずれかに限られます。

企業側には、法令改正の趣旨を正しく理解したうえで、適法な体制のもとで外国人受入れを実施することが強く求められています。

第6 まとめ

特定技能制度は、企業の人材戦略にとって非常に有益な制度ですが、正しく運用しなければ大きな法的リスクを伴います。

今後の法改正に備え、適法な申請手続き体制を整えるとともに、専門資格者と連携した企業運営を進めることが大切になります。

当事務所では、特定技能に関する相談も含め、あらゆる外国人労務に関する相談をお受けしています。ぜひお気軽にご相談ください。