不法就労による外国人労働者、事業主・担当者の摘発が増加―「知らなかった」では済まされない外国人雇用のリスク

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コラム

(※本記事は、令和8年2月1日現在の情報によるものです)

外国人を雇用する際は、日本人の雇用時と比べ、特に注意すべき重要ポイントが幾つか存在します。

今回はその中でも、一歩間違えると事業主や担当者個人が刑事責任追及のリスクを負い、事業経営の危機にまで発展し得る、「外国人労働者の不法就労」について解説します。

1「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」の発表

深刻な人手不足を背景に、多くの事業所で外国人労働者の雇用が定着しつつあります。外国人材は、介護、建設、製造、外食など幅広い業種でなくてはならない存在になってきました。

そのような中、令和8年1月23日、高市首相の指示で発足した関係閣僚会議より、「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」(以下、「本対応策」)が発表されました。

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/gaikokujinzai/index.html

本対応策では、外国人の受入れに関する課題や対応施策について幅広く述べられています。

外国人雇用主の観点から見ると

「今まで以上に外国人就労の実態に対する警察・出入国在留管理庁の捜査・調査や、在留資格の審査・処分が厳しくなること」

が明示された点は注意が必要です。

例として、就労系在留資格である「技術・人文知識・国際業務」(以下、「技人国」)の記載を見てみましょう。

本対応策9頁以下では、要約すると、「技人国資格での外国人在留数が増加している」が、一方で「認められた活動内容に該当しない業務に従事する外国人がいるなど対策が必要となっている」ため、「速やかに疑いのある受入機関等の活動状況を調査しつつ、審査の厳格な運用と許可の在り方を検討する」旨が述べられています。

このような政府方針もあってか、当事務所においても、外国人雇用主から不法就労助長罪(後述)に関するご相談が増加しています。また、報道でも、不法就労による外国人逮捕のニュースをよく目にするようになりました。

2 外国人労働者が不法就労で摘発される具体例

不法就労での摘発例は以下のようなケースです。

在留資格外の就労

  • 経営管理の資格で入国した外国人を雇用し、建設現場で単純労働させた
  • 技術人文国際の資格で入国した外国人を雇用し、工場や飲食店で単純労働させた

在留資格なし

偽造在留カードをもった(=本来日本に入国・就労できない)外国人を雇用し、労働させた

オーバーステイ

在留可能期間が満了しているにもかかわらず、そのまま労働させた

就労許可時間の超過

  • 留学の資格で入国し、週28時間以内の資格外活動許可で就労できる外国人を雇用したが、就労許可時間を超えて働かせていた
  • 不法就労外国人は、摘発されれば警察の捜査及び出入国在留管理庁の調査対象となり、身柄拘束を受け、最終的に出身国へ強制送還される恐れがあります。

3 【重要】事業者の不法就労助長罪―「不法就労だと知らなかった」では許されない

一方、外国人労働者を雇用する事業者や担当者個人も、外国人労働者に「不法就労をさせた」として、不法就労助長罪(出入国管理及び難民認定法第73条の2)の刑事責任を問われる可能性があります。

この点は、外国人を雇用する上で極めて注意が必要なポイントです。

自社の外国人労働者が不法就労で逮捕された際、当事務所へご相談に来られる事業主・担当者の多くが、「不法就労だと知らなかった」、「紹介者が問題ないと言ったから信用して採用した」、「外国人労働者本人が不法就労ではない、大丈夫だと言ったから信じて働かせた」と仰います。

しかしながら、不法就労助長罪は、不法就労に該当することを知らなかったことを理由として、処罰を免れることができないと、条文に明記されています(同上第2項)。

なお、同条項では、不法就労に該当することを知らなかったことにつき、「過失のないときは、この限りではない」としています。

この「過失」(注意義務違反)がなかったと認められるかは、最終的に総合判断となりますが、「過失がない」と評価される典型例としては、

出入国在留管理庁の在留カード読み取りアプリを使い、ICチップで在留カード自体が偽造でないかを確認した、また、在留カードの原本で自ら氏名・在留資格・有効期限等を目視確認していた

https://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/rcc-support.html

(※在留カードは個人情報が含まれますので、確認時は外国人労働者の同意を得て行うようにしてください。)

等が挙げられます。

逆に、在留カードの内容を全く確認していなかった、コピーを提出させるだけで済ませた等は、期限切れや偽造を見抜けないため、「過失あり」と判断される方向に働きます。

また

  • 採用する外国人の在留資格(例えば「技術人文国際」「特定技能」等)により従事させて良い業務内容が異なることから、弁護士や行政書士等の専門家に確認し、実際に就労させる予定の業務内容と合致しているかを精査していた
  • 従事可能な業務以外に従事させたり、更新期間が切れてオーバーステイ状態で業務をさせたりすることがないよう、社内に確認・管理体制や対策を講じていた

等の場合には、「過失がない」と判断される方向に働きやすくなります。

4 特定技能及び技能実習(育成就労)外国人への影響

雇用している外国人労働者が不法就労をしていた場合、事業主・担当者が刑事責任(不法就労助長罪)を問われるだけでなく、現在雇用している特定技能・技能実習(令和9年4月から育成就労)外国人労働者にも影響が及びます。

特定技能制度・技能実習制度(育成就労制度)は、いずれも「外国人雇用関連の法令違反がないこと」や「適正な外国人受入れを行う体制を有する事業者であること」を前提としているため、不法就労助長罪のような出入国管理関係法令違反を犯してしまうと、特定技能受入機関の欠格事由に該当し得ます。

欠格事由に該当してしまうと

  • 原則5年間、新たな特定技能外国人を受け入れられない
  • 既存の特定技能外国人についても更新・変更が認められない

という事態になりかねません。

また、技能実習(育成就労)についても、不法就労事案が発覚した場合、実習実施者としての適格性欠如や法令遵守体制に重大な問題ありとされ、技能実習計画の取消しや新規技能実習計画の認定拒否が行われる可能性があります。

認定計画の取消しがなされると

  • 既に受け入れている技能実習生の技能実習が継続不可となる
  • 原則5年間、新たな技能実習生の受入れができなくなる

という事態が生じ得ます。

外国人労働者の雇用比率が高い事業者にとって、特定技能・技能実習(育成就労)外国人の受け入れができなくなれば、会社経営の根幹を揺るがすことになりかねず、ただでさえ日本人の採用が難しい昨今において、要員計画の練り直しや事業規模の縮小等を余儀なくされる可能性が高まる点には十分な注意が必要です。

5 最後に

外国人労働者の雇用は、もはや多くの事業者にとって不可欠なものです。

「今はまだ日本人だけでなんとか要員確保できている」「取引先が外国人を嫌がる」というような事業所でも、数年のうちに、外国人労働者なしでは事業規模が維持できない状況になると予想されます。しかしながら、上記のとおり、自社から不法就労外国人を出してしまうと、人材確保は一気に困難となります。

今後は

「技術・人文・国際の在留資格で雇用している外国人労働者がいるが、単純作業を主にやらせている。しかし、同業者で誰も摘発されていないから、このまま続けさせてよいだろう」

といった安易な発想が、長期的に見ると自社の事業の継続を困難にしかねません。

また

「紹介者や外国人労働者本人が、『大丈夫、不法就労ではない』と言ったから信じた」

という言い分も、上記のとおり、外国人雇用においては通用しません。

事業主・担当者個人の刑事責任という重大なリスクにつながります。

外国人雇用は制度変更が早く、また、上記のとおり法令違反時のリスクが大きいため、雇用に向けた第一歩を踏み出しにくいのも現実です。

自社の外国人労働者が不法就労ではないか、また、外国人を雇用したいが法的リスクが怖いというような場合は、できるだけ早期に外国人雇用を専門とする弁護士・行政書士等の専門家へ相談されることをお薦めします。