
宿泊業において「語学堪能な外国人をフロントで採用したい」というご相談をよくいただきますが、そこで問題となるのが「技術・人文知識・国際業務(以下、技人国)」の外国人労働者に従事させてよい業務と、特定技能が従事すべき「現場業務(単純労働)」の線引きです。
令和7年に、出入国在留管理庁より、この区分けを明確化した資料「ホテル・旅館等において外国人が就労する場合の在留資格について」(以下、入管庁資料)が示されています。
https://www.moj.go.jp/isa/content/001443494.pdf
今回はこの資料を基に、誤解が生じやすい「フロント業務の範囲」と、注意すべき「違法リスク」について解説します。
入管庁が示す「OK」と「NG」の区分け
まず、以下の表をご覧ください。これは入管庁資料に基づき、技人国の在留資格で「できる業務」と「できない業務」を整理したものです。
| 業務区分 | 具体的な作業例 | 技人国での可否 |
|---|---|---|
| フロント業務 | チェックイン・アウト、観光案内、ツアー手配、翻訳・通訳 | ○(可能) |
| 企画・広報 | プラン立案、チラシ作成、SNS発信、HP管理 | ○(可能) |
| 接客業務 | 館内案内、問い合わせ対応 | ○(可能) |
| レストラン | 配膳・片付け、料理の下ごしらえ・盛り付け | ×(不可) |
| 現場・雑務 | 売店での販売、客室清掃、備品の点検・交換 | ×(不可) |
【ポイント】
「技人国」はあくまで、大学等で学んだ専門知識や、外国語能力(翻訳・通訳)を活かす業務に対する許可です。そのため、語学力を要するフロント業務は「○」ですが、肉体労働が中心となるレストランの配膳や客室清掃は「単純労働」とみなされ「×」となります。
一方で、「特定技能(宿泊)」の資格であれば、フロントからレストラン、清掃まで、上記すべての業務を行うことが可能です。
「フロントなら何でもOK」ではありません
ここで多くの経営者様が悩まれるのが、「フロント業務の流れで、荷物を運んだり、少し掃除を手伝ったりするのは違法なのか?」という点です。
この点について、同資料には非常に重要な「注釈(例外規定)」が記載されています。
「通訳として宿泊客に対応する場合のほか、採用当初の実務研修期間に研修の一環として『技術・人文知識・国際業務』に該当しない業務に従事することや、フロント業務に従事している最中に急遽、宿泊客の荷物の運搬等を行わざるを得なくなった場合など、一時的に『技術・人文知識・国際業務』に該当しない業務を行うことは、入管法上許容されます。」
つまり、以下の2つのケースに限っては、例外的に単純労働(荷物運び等)も許容されます。
- 実務研修期間: 採用直後に、ホテル業務全体を理解するための研修として行う場合。
- 一時的な対応: フロント業務中に、突発的に荷物を運ぶ必要が生じた場合など。
ここが落とし穴!弁護士からの注意点
上記の「例外」を拡大解釈しないよう注意が必要です。
- × 毎日ランチタイムだけレストランを手伝わせる
- これは「一時的」ではなく「恒常的」な業務とみなされ、資格外活動違反になるリスクが高いです。
- × 「研修」と称して半年間ずっと清掃をさせる
- 合理的な研修期間(数週間~数ヶ月程度)を超えると、実質的な単純労働の強要と判断される可能性があります。
まとめ:迷ったら「特定技能」の検討を
「技人国」の外国人に、フロント業務以外のマルチタスク(清掃、配膳、販売)も期待したい場合は、無理に技人国で通そうとせず、「特定技能(宿泊)」での採用、または在留資格の変更を検討するのが安全かつ確実です。
なお、「特定技能」は「技人国」に比べて求められる日本語能力が低いため、ホスピタリティが求められるホテル・旅館の従業員としては使いづらいというお声も良く聞きます。
当事務所では、「特定技能労働者を採用後、できる限り早期に接客関係業務に従事させるための教育フロー」といった具体的なご相談も承っております。不法就労助長罪のリスクを避けるためにも、雇用前にぜひ一度ご相談ください。
(引用・参照元)
出入国在留管理庁「ホテル・旅館等において外国人が就労する場合の在留資格について」
