自社は特定技能労働者を雇用できるの?―特定技能労働者採用までのチェックポイントと流れ―

[投稿日]2026.02.26
[更新日]
コラム

人手不足が深刻化する中、2026年(令和8年)1月、政府は今後5年間の外国人材(特定技能+育成就労外国人労働者)の受入れ上限数を過去最大の「123万人」とすることを閣議決定しました。

これに伴い、特定技能制度の対象分野も拡大され、いよいよ外国人材の活用は企業存続の鍵を握るフェーズに入っています。

しかし、「特定技能」という言葉は知っていても、「自社が対象なのか」「何から始めればよいのか分からない」というご相談を多くいただきます。

本コラムでは、特定技能外国人の受入れを検討する企業様に向けて、最初に確認すべきチェックポイントと採用までの基本的な流れを解説します。

1. 最初の関門「3つのチェックポイント」

まず、貴社が特定技能制度を利用できるかどうか、以下の3点をチェックしてください。

① 自社の業務は「19分野」に含まれているか?

特定技能は、あらゆる業種で認められているわけではありません。法令で定められた以下の「19分野」に該当する業務でのみ雇用が可能です。特に2026年の改正により、リネンサプライ、物流倉庫、資源循環の3分野が新たに追加されました 。

【特定技能19分野一覧】

①介護
②ビルクリーニング
③素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業(※「工業製品製造業」として再編・統合)
④建設(※土木、建築、ライフライン・設備)
⑤造船・舶用工業
⑥自動車整備
⑦航空(※グランドハンドリング、航空機整備)
⑧宿泊
⑨農業
⑩漁業
⑪飲食料品製造業
⑫外食業
⑬自動車運送業(※トラック、タクシー、バス)
⑭鉄道
⑮林業
⑯木材産業
⑰リネンサプライ(※新規)
⑱物流倉庫(※新規)
⑲資源循環(※新規・廃棄物処理等)

※自社の業務がどの区分に該当するか判断が難しい場合(例:製造業の細かな分類など)は、専門家による確認が必要です。

② 雇用形態は「直接雇用」か?

原則として、特定技能外国人は受入れ企業との「直接雇用」でなければなりません 。 ただし、季節による繁閑差が大きい「農業」「漁業」の2分野に限り、特例として「労働者派遣形態」が認められています 。それ以外の分野(建設、製造、外食など)では、派遣会社からの派遣受入れはできませんのでご注意ください。

③ 企業として「法令遵守」が出来ているか?

入管庁は、受入れ企業の適格性を審査します。以下の項目に該当する場合、許可が下りない可能性がありますので注意してください。

  • 労働保険・社会保険・各種税金を適切に納付していない。
  • 申請日前1年以内に、特定技能外国人と同じ業務に従事する労働者を非自発的に離職(非自発的離職)させている場合。
  • 過去5年以内に、労働法令違反(賃金未払い、違法残業など)や入管法違反がある。
【解説】非自発的離職とは

会社都合による解雇、退職勧奨による退職、希望退職の募集等がこれに該当し、「労働者の意思に反して雇用契約を終了させたかどうか」が基準となります。

注意が必要なのは、外国人労働者が「自主退職を申し入れしてきたものの、実際は会社内でハラスメントを受けており、これに耐え兼ねて退職せざるを得なかったような場合は、「非自発的離職」に該当し得ます。

なお、非自発的離職者を出していないという要件は、「特定技能外国人と同じ業務に従事する労働者」が対象になります。ですので、特定技能外国人だけでなく、同じ業務に従事する日本人がいれば、その者らの非自発的離職も対象となりますので十分注意してください。

2. 採用から就労開始までの「実務5ステップ」

上記のチェックポイントをクリアしたら、いよいよ採用に向けた活動に入ります。特定技能外国人の採用は、通常の日本人採用とは異なり、入管法に基づく厳格な手順と専門家の関与が不可欠です。ここでは、実務に即した標準的なフローを解説します。

STEP 1:求人・面接・内定(人材紹介会社等の活用)

まずは「誰を」採用するかを決める段階です。自社で直接海外から募集するのは現実的に難しいため、通常は外国人材に特化した「有料職業紹介事業者(人材紹介会社)」へ依頼することから始まるのが通常です。

  1. 求人票の作成: 業務内容や労働条件(日本人と同等以上の報酬など)を明確にします。
  2. 人材の紹介・面接: 紹介会社を通じて候補者と面接を行います。海外在住者とはWEB面接が一般的です。
  3. 採用内定: 採用したい人材が決まったら「採用内定通知書」を出します。
【注意】
特定技能には「試験合格者」と「技能実習修了者」の2パターンがあります。
どちらのルートかによって必要書類が異なるため、紹介会社へ確認しましょう。

STEP 2:支援体制の整備(登録支援機関との契約)

ここが特定技能制度の最大の特徴です。受入れ企業は、外国人に対して「入国前のガイダンス」「住居の確保」「公的手続きの同行」「日本語学習の機会提供」「3ヶ月に1回の定期面談」など、多岐にわたる「支援計画」を実施する義務を負います。

これらの支援業務は専門性が高く、社内リソースだけで完結させるのは困難な場合が大半です(「自社支援」を行うには、過去に外国人の支援実績があるなどの要件も必要です)。そのため、大半の企業は、出入国在留管理庁に登録された「登録支援機関」に支援計画を委託しています。なお、登録支援機関は外国人材紹介会社が兼ねているケースが多いです。

STEP 3:雇用契約の締結と事前ガイダンス

内定者と正式に「雇用契約書」および「雇用条件書」を締結します。 重要なのは、「外国人が十分に理解できる言語(母国語等)」で書面を作成し、説明することです。

日本語版だけでは認められません。 また、契約締結後、在留資格申請の前に、労働条件や活動内容についての「事前ガイダンス」を実施します。

STEP3についても、登録支援機関に委託した場合、登録支援機関が間に入って準備・対応してくれる場合が多いです。

STEP 4:協議会への加入

特定技能制度では、産業分野ごとに設置された「協議会」への加入が義務付けられています。 特に建設分野など一部の分野では、在留資格の申請前に協議会への加入や、事前の計画認定が必要となる場合があります。2026年の制度改正により、全分野で加入義務と協力義務が強化されていますので、早めの手続きが必要です。

STEP 5:在留資格(ビザ)の申請

出入国在留管理庁に対し、在留資格の申請を行います(海外から呼ぶ場合は「認定証明書交付申請」、国内在住者の場合は「変更許可申請」)。

【重要ポイント:在留資格申請のルール】

在留資格の申請書類作成や入管への提出を認められているのは、原則として以下の3者に限られます。

  1. 外国人ご本人
  2. 受入れ企業(雇用主)の職員
  3. 「行政書士」または「弁護士(届出済みの取次弁護士)」

「人材紹介会社」や「登録支援機関」のスタッフは、行政書士・取次弁護士の資格を持っていない限り、貴社の代わりに申請書類を作成したり、入管へ提出したりすることはできません(行政書士法違反となります)。

「紹介会社が全部やってくれると言った」というケースでも、無資格者による申請はトラブルの元になります。必ず貴社の社員様ご自身で行うか、正規の資格者(当事務所の弁護士や行政書士)にご依頼ください。

3. 最後に:特定技能制度活用のポイントは「準備」と「法令遵守」

特定技能制度は、即戦力となる人材を確保できる有効な手段ですが、その分、企業側に求められる責任や手続きのハードルも低くはありません。

特に、新制度「育成就労」との接続や、分野ごとの細かい運用ルール(転籍の要件、協議会の加入時期など)は頻繁に改正されており、最新情報の把握が欠かせません。

「自社の業務で特定技能労働者を雇用できるのか確認したい」、「登録支援機関の選び方が分からない」、「外国人雇用に関する契約書のリーガルチェックをお願いしたい」などございましたら、当事務所までお気軽にご相談ください。外国人雇用に詳しい弁護士が、貴社の状況に合わせた最適なプランをご提案いたします。