
弁護士・社会保険労務士 中村拓朗
第二東京弁護士会
この記事の執筆者:弁護士・社会保険労務士 中村拓朗
司法修習修了後、アンダーソン・毛利・友常法律事務所にて主に労働法を専門に取り扱う。 ロンドン大学キングスカレッジ修了、在米ニューヨークの日系大手商社子会社出向など、 海外経験や外国人労働者事案の取扱いも豊富。2023年上原総合法律事務所に入所。
令和8年(2026年)4月15日以降の申請から、在留資格「技術・人文知識・国際業務(以下、技人国)」における審査ルールが厳格化されました。
目次
■令和8年4月15日以降の制度変更点
出入国在留管理庁の公表によれば、前年の給与所得の源泉徴収税額が1,000万円未満の団体・個人等(カテゴリー3)または新設法人等(カテゴリー4)に該当する企業が、外国人を「言語能力を用いて対人業務に従事する業務(翻訳・通訳やホテルフロント等の接客など)」で雇用する場合、新たに以下の書類の提出が義務化されました。
出入国在留管理庁 ウェブページ
https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/gijinkoku.html
【追加提出が必要な資料】
- 所属機関の代表者に関する申告書
- 業務上使用する言語について、CEFR・B2相当の言語能力を有することを証する資料
(例:日本語能力試験 JLPT N2以上、BJTビジネス日本語能力テスト400点以上など)
※ただし、日本の大学や専修学校の専門課程等を修了している場合や、日本の中学・高校を卒業している場合は免除等の要件があります。
【対象となる申請】
在留資格認定証明書交付申請(新規入国時)や在留資格変更許可申請にとどまりません。
すでに在留中の方であっても、業務内容の変更や転職等により、新たに対人業務(翻訳・通訳や接客等)に主に従事することになった場合の「在留期間更新許可申請」時にも提出が求められます。
■改定の背景:宿泊業等で多発する「偽装技人国」と不法就労の防止
なぜこのような厳格化が行われたのでしょうか。
背景には、ホテルや旅館などの宿泊業をはじめ、接客を伴う職種において多発している「偽装技人国」の問題があります。
「技人国」ビザは、本来、一定水準以上の専門的技術や知識、または外国文化に基盤を有する思考・感受性を必要とする高度な業務に従事するための在留資格です。
しかしながら、実態は、「海外営業」、「通訳・翻訳」や「ホテルフロント」という名目で技人国ビザを取得させながら、客室の清掃、ベッドメイキング、荷物の運搬、レストランの配膳といった「単純労働」に専ら従事させているケースが後を絶ちません。
今回の制度変更は、対人業務をしていれば当然に習得できるであろう客観的な言語能力の証明を求めることで、専門性のない単純労働への従事(偽装技人国)を防ぎ、不法就労を根絶するという政府、入管庁の強い意図が表れていると言えます。
■事業主、担当者が不法就労助長罪に問われるおそれも
仮に、技人国ビザの外国人に清掃や配膳などの現業・単純労働を主として行わせた場合、外国人本人は「資格外活動(不法就労)」となり退去強制の対象になります。
それだけでなく、雇用した企業、事業主、担当者も「不法就労助長罪(入管法第73条の2)」に問われる重大なリスクがあります。
不法就労助長罪は、近年の法改正により厳罰化され(5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金等)、罰金刑以上に処せられると、一定期間、技能実習生(育成就労外国人)や特定技能外国人の受け入れが一切できなくなり、企業経営に致命的なダメージを与えかねません。
■最後に
外国人政策が厳格化する中で、「今までこのやり方でビザが下りていたから大丈夫」という過去の経験則は、もはや通用しなくなります。
技人国労働者の就労資格と、業務の実態が合致していない(またはその可能性がある)場合は、すぐに業務内容の見直しや就労資格の変更を検討してください。
自社の外国人雇用が適法に行われているか不安な方、また、急激に変化する外国人制度の中で、今後の採用・ビザ申請を適切に進めたいとお考えの方は、ぜひ外国人雇用の労務・法務に精通した当事務所へご相談ください。
