インドネシアの投資ビザ取得後によくある誤解:オーナーはどこまで現場業務ができるのか?

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コラム
ミユキ・ファッタ・リスキ Miyuki Fattah Rizki

ミユキ・ファッタ・リスキ Miyuki Fattah Rizki

この記事の執筆者:ミユキ・ファッタ・リスキ Miyuki Fattah Rizki

インドネシア大学法学部卒業。インドネシア個人情報保護責任者(DPO)。日本語能力試験1級合格。

弁護士 中村天洋

弁護士 中村天洋
第二東京弁護士会

この記事の監修者:弁護士 中村天洋

司法修習修了後、検事任官(東京地検、水戸地検等)。検事退官後、2021年上原総合法律事務所に入所。インドネシアにおいて現地法人の運営等を行うなど現地の法務にも精通。

インドネシア進出を検討している日本人経営者の中には、投資ビザを取得すれば、会社のあらゆる業務に自由に携わることができると考えている方も少なくありません。とはいえ、投資家・オーナーとして会社を経営すること、日常的な現場業務を行うことは別のものとして扱われます。この違いを正しく理解していないことで、思わぬリスクにつながるケースもあります。

本記事では、投資ビザ(Investor KITAS)の概要を簡単にご紹介するとともに、投資ビザ保有者がどこまで会社運営に関与できるのか、またインドネシアで事業を行う際に押さえておきたいポイントについて解説します。

投資ビザ(Investor KITAS)とは?

投資ビザ(Investor KITAS)は、インドネシアで事業展開を行う外国人投資家向けのビザです。インドネシアでは、外国人や外国企業も現地法人を設立して事業を行うことができ、その代表的な形態がPT PMA(Perseroan Terbatas Penanaman Modal Asing)と呼ばれる外国資本会社です。投資ビザは、こうしたPT PMAの株主、取締役、監査役など、会社経営や投資活動に関与する方が取得するビザとして利用されています。取得要件として、申請者は原則として100億ルピア(※2026/06/02時点の為替レートで約8,943万円相当)以上の株式を保有している必要があり、また会社側にも100億ルピア(同日時点で約8,943万円相当)以上の投資額が求められます。

投資ビザを取得すると、投資や事業管理に関連するさまざまな活動を行うことができます。例えば、会議への出席、事業運営の監督、会社の業績確認、会社内での立場に応じた一定のマネジメント業務などが含まれます。

なお、インドネシアには複数の投資家向けビザ制度があり、その一つがゴールデンビザ(Golden Visa)です。ゴールデンビザは、比較的大規模な投資を行う投資家向けの制度として設けられています。通常の投資ビザと比較すると、より長期間の滞在が認められるほか、投資活動や事業運営に関しても、より柔軟な制度設計となっています。一方で、ゴールデンビザは大規模な投資を前提としているため、通常の投資ビザと比べて、投資額や申請費用などの要件も高く設定されています。

本記事では、Investor KITAS(E28A)を対象として、特にレストラン、カフェ、中小規模事業などを運営する外国人事業者が実際によく直面するケースをもとに、日常的な事業活動という観点から解説を行います。なお、ゴールデンビザについては対象となる投資規模や制度内容が異なるため、別の記事で詳しくご紹介します。

ビザ 投資ビザ(Investor KITAS)
ビザインデックス E28A
入国回数 マルチプルエントリー(複数回入国可)
申請方法 オンショア・オフショア申請可
有効期間 1年 / 2年
延長可否 可能
延長回数 最大2回
1回あたりの延長期間 最長2年
最長滞在期間 最長6年
他の在留資格への変更 永住滞在許可への変更可能
費用 700万ルピア(1年)
※同日時点で約62,598円相当
950万ルピア(2年)
※同日時点で約84,955円相当

どこまで現場業務ができるのか?

投資ビザは、インドネシアで投資を行う方や会社を所有する方を対象としたビザです。そのため、一般的な外国人従業員とは異なり、投資ビザ保有者は就労許可を取得せずに会社経営へ関与することが認められています。

もっとも、行うことができる活動は、取締役・監査役・株主としての立場に基づくものに限られます。例えば、会議への出席、経営判断、会社の業績確認、事業全体の管理・監督などがこれに該当します。

レストラン経営を例にすると、店舗コンセプトを決定すること、メニュー価格を設定すること、従業員の採用を判断することなどは、一般的にオーナーとしての経営業務と考えられるため、通常は追加の就労許可を取得する必要はありません。一方で、日常的に厨房で調理を行うこと、スタッフへ業務指示を出すこと、顧客からのクレーム対応を継続的に担当することなどは、会社の現場業務にあたると判断される可能性があります。このような業務に関与する場合には、別途就労許可が必要となることがあります。

また、投資ビザ保有者は、自社の宣伝や広報活動を行うことも可能です。例えば、広告やプロモーションへの出演、自社の商品やサービスの紹介、SNSを通じた情報発信などが挙げられます。もっとも、本来就労許可が必要となる業務を適切な許可なく行った場合には、会社と本人の双方にリスクが生じる可能性があります。

実務上のポイント

実際の事業運営では、経営者としての業務と現場業務の両方に関わるケースも少なくありません。そのため、適切なビザや許可を判断する際には、会社内での役職だけでなく、実際にどのような業務を日常的に行っているのかという点も重要になります。

リスクと注意点

前述のとおり、投資ビザを保有しているからといって、就労許可が必要となる業務を自由に行えるわけではありません。実際に行う業務内容と、取得しているビザや許可の内容が一致していない場合、会社と本人の双方にリスクが生じる可能性があります。

例えば、本来必要となる就労許可を取得しないまま外国人が業務を行っていると判断された場合、企業側は適切な就労許可を持たない外国人を雇用しているとみなされ、行政処分や罰金の対象となる可能性があります。

また、必要な許可を取得せずに就労した外国人本人についても、インドネシアの出入国管理法令に基づく処分の対象となる場合があります。違反内容によっては、最大5億ルピア(同日時点で約448万円 相当)の罰金や最長5年の懲役刑が科される可能性があります。

こうしたリスクを避けるためには、実際に行う業務内容に応じて適切なビザや許可を取得することが重要です。そのため、インドネシアで事業を行う際は、ビザエージェントや専門家に相談し、必要な要件や最新の出入国管理制度について事前に確認することをおすすめします。

まとめ

投資ビザ(Investor KITAS)は、インドネシアで投資や会社設立を行う外国人向けのビザです。投資ビザを取得した方は、取締役・監査役・株主として会社経営に積極的に関与することができます。一方で、日常的な店舗運営や現場業務に直接携わる場合には、別途就労許可の取得が必要となるケースがあります。そのため、会社内での役職だけでなく、実際にどのような業務を行うのかを理解しておくことが重要です。インドネシアで事業を運営する際は、自身が行うことのできる業務の範囲を正しく把握しておくことが重要です。

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